膜③

そんな恐ろしく都合の良い膜で守られている中身である「私」とはいったい何なのだ?

外側へ外側へ意識をそらそうとしてきた内側の「私」とは・・・・?
・・・?
・・・?
・・・?


イメージを内側へ向けてみる。想像してみると・・・。


ヤバイ。


何もない。


膜の中身は


空っぽだ。


無だ。


「私」なんてどこにも無かった。


何もないのに何もないものを膜は守っていたのだ。


「何もない」ということだけが本当は怖くて膜はつくらざるをえなかったのだ。


そして膜はいつしか膜それ自体が「私」であると勘違いして一人歩きを始めてしまった。


魔法使いゲドの物語にあるように。


影がどんどん濃くなってついには本人と入れ替わってしまうかもしれないって話みたいに。
本人がどんどん影になっていくんだって。


ホラーだ。


そのホラーじみたことが起こっていた。


そうだ。


いつの間にか肉体は高機能ボディスーツをぴちっと身に着け、まるで「私」そのものであるように
世界を闊歩し、存在しているかのように見せていた。


あなたが見ている「私」は高機能ボディスーツをまとった肉体にすぎない。


つまり、「私」という自我である。